Friday, 1 September 2023

世界制覇を狙う中国の思惑が裏目に

The Telegraph, 30 August 2023

習近平国家主席の世界的有事への影響力は、国内の経済危機のおかげで薄れつつある

BY CON COUGHLIN

習近平は西側諸国から国内の苦境を隠そうと必死だ | CREDIT: GONZALO FUENTES / REUTERS

 中国の習近平国家主席は世界征服を夢見るかもしれないが、世界情勢に影響を与える力が弱まりつつある国の経営者であることに気づいている。

習近平が中国国民に、自国が「新時代」を迎え、中国が「世界の中心」に立つと語っていたのは、それほど昔のことではない。2017年、天安門広場近くの巨大な人民大会堂で演説した習近平は、「中国の特色ある社会主義」が中国を「大国」に導き、その「繁栄する」経済モデルが発展途上国に「新たな選択肢」を提供すると宣言した。

北京の経済支配を達成する計画は、野心的な「一帯一路」構想によって定義されているが、米国に代わって世界をリードする超大国になるという目標は、大規模な軍備増強にもつながっている。習近平は中国軍を「鋼鉄の長城」にするという野望を実現しようとしているため、今年の国防予算は7.2%増という目を見張るような増額が予定されている。

2014年から2018年にかけて、中国はドイツ、インド、スペイン、イギリスの海軍の艦船数を合計したよりも多くの軍艦を建造することに成功した。一方、習近平が軍事力に訴える用意があることは、人民解放軍に対して2027年までに台湾侵攻の準備を整えるよう最近指示したことにも表れている。

習近平の計画の唯一の問題は、中国経済がかつてない圧力に直面している時に、この計画が実行されようとしていることだ。30年にわたる目覚ましい経済成長を享受してきた中国は今、デフレの長期化という極めて現実的な見通しに直面している。

北京は外部に被害の実態を隠そうと必死になっているようだが、中国経済の約30%を占める住宅市場の崩壊などの重要指標は、習近平が直面している課題の大きさを浮き彫りにしている。中国の巨大不動産会社である恒大集団 (Evergrande)の株価は、今月に入ってから80%以上下落した。

パンデミック後に中国経済が実質的な成長を遂げられなかったため、発表された最新の数字では若者の失業率が過去最高を記録し、中国当局は若者の失業率を公表しないことを発表した。

そのため習近平は、世界中に中国の影響力を拡大する立場からほど遠く、他の国であれば即座に指導者の交代を求められるような危険な経済的逆風に直面していることに突然気づいたのである。

中華人民共和国の創始者である毛沢東はこう言っていた: 「一つの火種が草原の火事を起こすこともある。」

習近平が国内問題に気を取られているのは理解できるが、西側諸国の指導者にとっては、西側諸国に対する反感的な態度を抑えるよう北京を説得する努力を再開する好機である。

先ごろ南アフリカで開催されたBRICS・サミットに参加した習近平が指摘したように、中国はロシアや南アフリカのような経済的に末期的な衰退にある国家と連携することで、経済的な不振をさらに深刻化させる危険性がある。

そのような状況において、ジェームズ・クレバリー外務大臣が今週中国を訪問することは、北京が西側諸国との取引においてより積極的な態度をとるよう促すのに役立つだろう。

左派は中国のひどい人権記録を無視していると非難し、右派は中国共産党支配者が香港の民主主義を抑圧し、台湾を威嚇し、少数民族のウイグル族への残忍な弾圧を続ける限り、英国は中国と無関係であるべきだと主張している。

しかし、習近平がロシア大統領ウラジーミル・プーチンに対する北京の支持を維持することの是非を真剣に問うているに違いない今、クレバリーの訪問は北京とより建設的な対話を確立する好機となる。

中国共産党の指導者たちは、いきなり西側のリベラルな価値観の応援団になるわけではないが、西側が自国の利益に積極的に敵対する国とのビジネスに消極的になっていることが、自国が直面している経済的困難の多くをさらに悪化させていることも痛感しているはずだ。

もし習近平が中国の経済的な運気を回復させる見込みがあるとすれば、それは西側諸国との信頼を回復することによってのみ可能であり、BRICSのような組織を通じてルールに基づく代替的な国際システムを構築するという幻想に浸ることによってのみ可能ではない。

訪中時にクレバリーが説明したように、北京が経済破綻を避けるためには、「そうすることがお互いの利益になる」西側の指導者と協力することが中国の利益になるのは確かである。

習近平でさえ、世界支配のビジョンが破綻した今、真実に気づかなければならない。中国は、西側諸国が中国を必要としている以上に、西側諸国を必要としているのだ。



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